中国の映画産業(1)「賀歳需要多少影片?(お正月はどのくらい映画が必要?)」

 授業で使った文献の続き。

「賀歳需要多少影片?(お正月はどのくらい映画が必要?)」『瞭望』2009年12月7日

[要旨]
今年のお正月映画枠は豊作で、作品数は50以上と言われている。『熊猫大侠』、『我的唐朝兄弟』の上映から来年の春節(バレンタイン・デー)まで、3ヶ月の長きに渡り、一年の3分の1がお正月といっても言い過ぎではない。
 作品数が多くなれば観客の選択肢が増えると思われるが、実際は映画館で一度に上映できるのは数編に過ぎず、一部の作品が“特権”を享受する以外には、大多数は数日上映されるだけで終わってしまう。国慶節の期間中は、『建国大業』の興行収入が3.9億元に達し、20作に近い「献礼」、「非献礼」、「主旋律」、「非主旋律」作品の中で独り勝ちした以外は、2位の『風声』が1.4億元以外は全く振るわなかった。
 近年、中国における(映画館の)スクリーン数は急速に増加し、去年は全国総数4097から今年末は4900に増えた。多くの映画館ではスクリーンの数は10以下だが、多くの場合、4〜5のスクリーンで同一作品を上映し、他の作品には1〜2しか与えられない。
 映画産業は近年比較的発展が良好なクリエイティブ産業の分野だが、制作側の情熱が観客の消費能力を超過している。興行成績総計は昨年の15億元から20億元へと増加しているが、このような巨大な“器”でも映画製作者の欲望を盛りきれない。我々の映画産業の発展はもっと理性的でなくてはならず、映画自体の工夫や、他の収益方法の開発が必要である。

[コメント]
 中国映画についてはインディペンデントのものしか観ていなかったので、主流の映画を取り囲む状況について概況が分かり、勉強になった。映画市場自体は拡大しているのに、内容的には画一化の方向に進んでいるという批判自体は、なにやらデジャヴな印象も受ける。
 1990年代後半、グローバリゼーションの煽りで、世界の映画がハリウッドに席巻され、多くの国の映画館でローカルな映画が上映できなくなり、映画の多様性が危機に瀕しているといった声がよく聞かれたように記憶しているが、実際は、2000年代は韓国でも日本でも映画産業はむしろ盛んになったように思う。
 インディペンデント映画に関しては、特にドキュメンタリーに関してはデジタル・カメラの普及とかで、低予算で面白い作品が多数撮られるようになったという印象がある。中国の場合、規制さえ緩和すれば、インディペンデント映画にはまだのびしろがあるように思う。
 とはいえ、日本でもミニシアター文化は若い世代に引き継がれず、ミニシアターの閉鎖も多いので、楽観視はできないが。