並木頼壽・杉山文彦編著『中国の歴史を知るための60章』

並木頼壽・杉山文彦編著『中国の歴史を知るための60章』
明石書店 (エリア・スタディーズ87)、2011年1月
価格: ¥ 2,100


下記の4章を担当しました。
第42章 連省自治から国民革命へ―統一国家への模索―
第43章 両大戦間期の中国社会―都市と農村、華僑と中国本土―
第44章 日中戦争=抗日戦争への道―侵略の全面化と抗戦体制の確立―
第45章 戦時下の中国―戦時体制のもたらした社会変容―

概説書という性質上、参考文献を十分に挙げられませんでしたが、家近亮子、石川禎浩、岩間一弘、奥村哲、金子肇、久保亨、後藤春美、小浜正子、笹川裕史、田中恭子、田中仁、前田哲男各氏(五十音順)の著作にお世話になることが大きかったです。この場を借りて感謝すると同時に、不勉強ゆえにあまりオリジナリティを出せなかったことを反省。

(第42章より)
 辛亥革命以降の中国では、多くの省で、駐留する軍人が政治を支配していた。これらは多くの場合、内戦で肥大化した兵員を維持する費用を現地調達しなくてはならず、勢力圏確保のために互いに抗争を繰り広げた。こられの軍隊に対する経費は、地方財政の大きな負担となっていた。これらの軍人は、このため非難を込めて「軍閥」とよばれた。これに対し、省議会などの自治機関が中心となって、軍閥の省政治への干渉を制限しようとする省自治の動きも出てきた。
 1920年湖南省で、省長民選などを定めた省独自の憲法制定の動きが登場した。これを皮切に、四川、浙江、広東など長江以南の諸省のなかから相ついで省憲法制定の動きがおこる。これらの省を中心に、北京の中央政府とは別に、連邦制の国家を作ろうという「連省自治」構想も唱えられた。一方、北京の中央政府では、袁世凱の死後、軍閥間の抗争による目まぐるしい政権交代がつづき、全国政治に対する掌握力は著しく低下していた。このため、省自治に対し妥協せざるをえず、1923年制定の憲法では省自治法の制定権が認められた。
(下略)